5/15 (土) 晴れ ゴロゴロ岳

病み上がりの山

金剛山から戻ると、かかとを痛めていた。きっと、ズボラしてストックを使わなかったせいだ。
歩くと痛いので、自転車と爪先立ち歩行。おかげで膝、お尻、肩までが痛くなった。
散歩がダメなら歌のレッスンだと、部屋に篭もってみたが高音が出ない。意地になって無理やり搾り出していると、喉まで痛くなってきた。
眠れぬ夜が続いて、風呂を焚かずにシャワーの湯を頭から浴びた瞬間、全身に震えが来て、こんな感覚は、いつ以来だろう・・と、廻らせたが思い出せない。ストレッチ体操の途中で中途半端なうたた寝。慌てて飛び起きると、耳鼻咽喉が不通だった。
翌朝、ファックス台に転がっていた「ベンザ」のビンが目に入り、もしや風邪か・・・と、熱っぽい頭でようやく思い当たった。

歳を取ると、喉が渇いても、なかなかそれに気づかぬ事があると、何かで読んだ。
今まで風邪に気づかなかったのも、おそらくはそれに近い現象なのだろう。
根っからの薬嫌い、医者嫌いを返上しての「ベンザ」を一錠。金剛山から数えて一週間目だった。
薬の効果こそあまり期待できなかったが、一連の経過の原因がわかると、幾分ホッとしたのか、とたんにプラス思考になってよく食べ、よく遊び、元気元気! さっそく梅雨前のひと登りにも繰り出すことにした。

JR福知山線沿いの山を、いくつかリベンジ登山の候補に挙げるが、なかなか決定には至らず、たまたま出向いた大阪国際空港の展望デッキで、こちらに手招きする六甲山が目に入ると、あっという間に予定は変更されてしまう。

「来週は旅行やし、まだ、食事の支度もままならぬ状態で、長時間歩行は無理やで。」
「ウ〜ン確かになぁ」
あらためて地図を広げるも、適当なコースが思い当たらぬまま、ウジウジと朝を迎える。
芦屋からなら、ルートも多いから、潰しも利くと、とりあえずは家を出て、駅までの道すがら、愛用のメモ帳とペンを忘れてきたことにハタと気づいて、一瞬怯むが、構内でタオルまでも忘れたことに気づき、いよいよ開き直る。

芦屋川駅前広場でのザック持ちの雑踏、さらには「風吹岩」への行列を見送れば、後は「開森橋」から車道登り、「ゴロゴロ岳」コースしか残っていなかった。
「そうだ、最近ご無沙汰している『ガベノ城』へ行こう。帰りには、今、おっかけをしている植物研究家の先生監修の『北山植物園』にも寄れるし・・」

長い車道も久々ならば心地よく、いきなり取り付きでのタニウツギのお出迎えに高揚。木陰の沢伝いをビチャビチャやりながら、たまにポタンと落ちてくる毛虫の成長ぶりに肝をつぶし、
「これは、『ヤブコギ禁止』のお告げやなぁ。」
と、天を仰いだ。

人ごみを嫌ってこっちを選んだのに、「柿谷コース」、「ゴロゴロ岳」、「ガベノ城」まで、ついぞ誰にも出会わずじまい。その代わり、すっかり夏向きに様変わりした花々と顔を合わしてはレンズを向ける。
「そうかデジカメには、時計が内蔵されているんだ」と、調子に乗ってメモ帳代わりの写真を取り続けた。
剣谷の車道に降り立つ手前で弁当を広げ、ホッと一息。
すこし疲れていることに気づく。
そういえば余力を残した下山路で、見晴らしの良さそうな尾根筋へガァーッと踏み入ろうとして、いきなり四方八方から枝葉を伸ばした樹木に、バサッとザックを羽交い絞めされたっけ・・・
まるで山の神が総出で
「行くな!」
と、言ったようだったと苦笑。
おかげで、なんとか無事に下山出来たようだ。

1時前到着の植物園ですっかりくつろぎ、ガーデンデザインのノウハウ、蔵書の写し、珍種の宿根草購入、シャクナゲの並木鑑賞に・・と興じる。
「欲の出せない山行もそれなりに良いもんだな」と、久しぶりのビールを飲み干した。

以下は
北山植物園
人も水鳥も
気ままな川辺
毛虫にカメラもビビル   雲南省のバショウ 巨大アンスリウム オカ トラノオ シャクナゲ   夙川のサギ